妻がNHKと受信契約を締結したが受信料を支払わず、NHKが夫に受信料を請求した訴訟で、NHKが敗訴した。これは予想外だ。
民法第761条はこのように規定している。
「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」
テレビの受信に関する契約は「日常の家事」に関するものだと思っていたが、札幌地裁は「商品の対価として支払うもの」でないという理由で否定したようだ。
ところで、判決文はまだ見ていないから断定は出来ないが、NHKは夫婦間の日常家事債務の連帯性が否定された場合に備え、予備的に、夫がテレビを設置したことによる受信料請求も行っているだろう。NHKが敗訴したということは、この請求も認められなかったのかな。
もしそうだとすれば、「受信料の支払いは法的な義務です」という長年のNHKの主張が裁判所によって否定されたことになる。これはNHKにとって一大事だな。
この裁判の判決文は是非読んでみたい。そろそろ被告などからWebにアップされてないかな。
追記
民法761条の適用について毎日新聞の記事が判決を詳しく紹介している。
例えば、専業主婦が後払いで米を買ったとする。米屋としては、普通なら無職の人間に後払いで物を売ったりしないが、稼ぎのある夫がいる主婦なら、最終的に夫の負担で代金を回収できると期待するから後払いで米を売ることが出来る。
民法761条は、この米屋の「期待」を保護するためにある。もし夫が米代を払わないと事前に分かっていたら米を売らなかっただろう。
もし、この法律が無く、米屋が夫に対して代金を請求できず、妻にも支払い能力が無かったら、売った米の分だけ損害がでる。そうなっては、米屋は妻にツケで米を売らなくなり、生活が不便になる。(昔はツケ払いが頻繁に行われていたらしい)
では、NHKの場合はどうか。NHKは放送電波を流す対価として受信料を受け取るわけではない。もし、夫が受信料を払わないことが事前に分かっていたとしても、妻との間で受信契約を結ばない理由にはならない。それなら、民法761条でわざわざ保護する必要は無いということだ。
判決文全文を読んだわけではないが、おそらくそういうことだろう。
北海道新聞
受信料訴訟でNHKの請求認めず 札幌地裁 (03/19 14:33)
衛星放送の受信契約を結んでいるにもかかわらず、受信料を支払わなかったとして、NHKが札幌市の会社役員男性に未払い分の支払いを求めた訴訟の判決が19日、札幌地裁であった。杉浦徳宏裁判官は「男性が契約をした妻に代理権を与えておらず、取引を保護する民法の適用はない」として、NHKの請求を棄却した。NHKが受信料の支払いを求めた申し立てをめぐる地裁判決は2件目。NHKの請求を退けた判決は簡裁27件を含めて全国で初めて。
判決によると、男性の妻は2003年2月、NHKと衛星放送の受信契約を結んだが、男性は同年12月以降、支払いに応じず、08年3月まで52カ月分約12万2千円の受信料が未払いとなっていた。男性側は「妻が勝手に受信契約を結んだ。食料購入などの日常家事については、妻の契約に対し、夫も連帯して支払い責任を負うが、受信料は、商品の対価として支払うものではなく、民法の定める支払い義務にはあたらない」と訴えていた。
民法第761条はこのように規定している。
「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」
テレビの受信に関する契約は「日常の家事」に関するものだと思っていたが、札幌地裁は「商品の対価として支払うもの」でないという理由で否定したようだ。
ところで、判決文はまだ見ていないから断定は出来ないが、NHKは夫婦間の日常家事債務の連帯性が否定された場合に備え、予備的に、夫がテレビを設置したことによる受信料請求も行っているだろう。NHKが敗訴したということは、この請求も認められなかったのかな。
もしそうだとすれば、「受信料の支払いは法的な義務です」という長年のNHKの主張が裁判所によって否定されたことになる。これはNHKにとって一大事だな。
この裁判の判決文は是非読んでみたい。そろそろ被告などからWebにアップされてないかな。
追記
民法761条の適用について毎日新聞の記事が判決を詳しく紹介している。
裁判は妻の結んだ契約の効果が男性に及ぶのかが争点になった。NHK側は「日常生活に不可欠なテレビ放送に関する契約は夫婦が連帯して責任を負う」と主張。しかし、杉浦裁判官は「受信料が国民から徴収される特殊な負担金で、放送の対価として払われるものでない」と指摘。「物品の売買とは違い、取引の第三者を保護する民法の適用はない。また、男性が妻に代理権を与えた事実もない」と判断した。
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20100320hog00m040004000c.html
例えば、専業主婦が後払いで米を買ったとする。米屋としては、普通なら無職の人間に後払いで物を売ったりしないが、稼ぎのある夫がいる主婦なら、最終的に夫の負担で代金を回収できると期待するから後払いで米を売ることが出来る。
民法761条は、この米屋の「期待」を保護するためにある。もし夫が米代を払わないと事前に分かっていたら米を売らなかっただろう。
もし、この法律が無く、米屋が夫に対して代金を請求できず、妻にも支払い能力が無かったら、売った米の分だけ損害がでる。そうなっては、米屋は妻にツケで米を売らなくなり、生活が不便になる。(昔はツケ払いが頻繁に行われていたらしい)
では、NHKの場合はどうか。NHKは放送電波を流す対価として受信料を受け取るわけではない。もし、夫が受信料を払わないことが事前に分かっていたとしても、妻との間で受信契約を結ばない理由にはならない。それなら、民法761条でわざわざ保護する必要は無いということだ。
判決文全文を読んだわけではないが、おそらくそういうことだろう。