3月11日の東日本大震災による津波で学校の生徒が被害に遭うこともあったが、これに対し、学校が生徒を適切に避難させなかったから死んだのだと損害賠償を求める人も出てきた。こういう場合、学校に賠償義務はあるのか、私なりの考えを書いてみようと思う。


 まず、賠償責任を課すには、学校側に生徒の命を助ける能力があり、適切に行動すれば高確率で生徒は助かったであろう、しかし、学校の不適切な行動により生徒は死んだ、ということが前提だ。ここなら安全と思って逃げた高台の標高が足りなかったとか、逃げるための手段がなかった(避難場所は遠く車は少ない)とか、そういう事情なら過失は無いと考えるべきだろう。

 このように、学校が可能なのに避難させなかった場合、学校が賠償義務を負うかどうかは、このような災害時に生徒を助ける義務があったかに関わると思う。その義務の存否は学校の種類による。

・幼稚園、保育所、小学校
救助義務は当然あるだろう。

・中学校
義務教育ということを考えて、救助義務を認めるべき。

・高校
15歳にもなると、危険かどうかは自分で判断できる年齢だと考えることもできる。だが、危険か否かを知るためには情報入手手段が必要である。例えば、テレビ付携帯電話。電話は使えないがテレビはある程度視聴可能なので、そういう物の持ち込みを学校が許していたかが問題である。携帯電話の持ち込みを認めていない学校の生徒は災害情報の入手手段を学校に奪われている。したがって、学校が適切に判断し、生徒を避難させる義務を負う。また、逃げようとする生徒を教師が引き留めた場合も、学校の責任を認めるべきだろう。
では、携帯電話の持ち込みを認めていた学校ではどうだろうか。15歳はまだまだ子供ともいえる。救助義務を認めるかどうかは、このあたりが境界だと思う。私としては、救助義務ありと考える。

・大学、専門学校、自動車学校
これは、自分で物事を考えることのできる人間が行くところであり、救助義務は無いと思う。