先日購入した司馬遼太郎「坂の上の雲」の1巻を読み終えました。

 この作品は、明治時代に活躍した正岡子規、秋山好古、秋山真之を描いた歴史小説である。正岡子規は短歌俳句の世界で、好古は陸軍騎兵隊で、真之は海軍で活躍した。第1巻は、彼らの少年時代から、いよいよこれから大仕事に取り掛かる青年期に入るあたりまでを描いている。
 私が感じたことは、明治時代の希望である。まだ近代国家として産声を上げたばかりの日本では、己の実力次第で上に登り、国家を引っ張っていくことが現代よりも現実的なものとして描かれている。事実、それほど裕福ではない武家の家に生まれた秋山兄弟が日露戦争で重要な役割を果たすのだ。特に、日本海海戦のT字戦法は秋山真之無しには語れない。

 なるほど。すでに完成したとも思える現代の日本と異なり、当時の日本は欧米列強に追い付け追い越せであった。明確な目標がそこにはあった。だからこそ、その国を背負う若者を生き生きと描くことができるのであろう。