共産党は「大企業には内部留保が160兆円あるから雇用を守れ」とよく言う。

 きっと、内部留保160兆円という言葉を、会社の金庫に160兆円も保管されているという意味で使っているのであろう。

 会計を少しでもかじったことのある人間なら分かると思うが、内部留保とは、過去に計上した利益のうち配当されていない部分の金額である。貸借対照表でいえば利益剰余金である。

 会社が新しく土地や建物や機械を買っても、その代金はすぐには費用にならない。減価償却という手続きにより、30年使える建物は30年かけて費用化される。3億円で買った30年使える建物にかかる費用は年間1000万円である。そして、建物の価値は1000万円減ったと考える。

 つまり、3億円で工場を建てても、その年に3億円の費用がかかったとは考えない。


 共産党がよく引き合いに出すトヨタ自動車だが、平成24年3月期決算によれば、内部留保は約11兆9000億円、それに対し、手持ちの現金は約1兆6000億円である。

 内部留保を取り崩すということは、工場を売り払って赤字になってでも給料を払うということである。