つぶや記

京都で大学生をやっている松岡智之です。 新聞記事に突っ込んだり、読んだ本の感想なんかを徒然なるままに執筆します。

受信料

受信料訴訟、NHK敗訴

 妻がNHKと受信契約を締結したが受信料を支払わず、NHKが夫に受信料を請求した訴訟で、NHKが敗訴した。これは予想外だ。


北海道新聞
受信料訴訟でNHKの請求認めず 札幌地裁 (03/19 14:33)

 衛星放送の受信契約を結んでいるにもかかわらず、受信料を支払わなかったとして、NHKが札幌市の会社役員男性に未払い分の支払いを求めた訴訟の判決が19日、札幌地裁であった。杉浦徳宏裁判官は「男性が契約をした妻に代理権を与えておらず、取引を保護する民法の適用はない」として、NHKの請求を棄却した。NHKが受信料の支払いを求めた申し立てをめぐる地裁判決は2件目。NHKの請求を退けた判決は簡裁27件を含めて全国で初めて。

 判決によると、男性の妻は2003年2月、NHKと衛星放送の受信契約を結んだが、男性は同年12月以降、支払いに応じず、08年3月まで52カ月分約12万2千円の受信料が未払いとなっていた。男性側は「妻が勝手に受信契約を結んだ。食料購入などの日常家事については、妻の契約に対し、夫も連帯して支払い責任を負うが、受信料は、商品の対価として支払うものではなく、民法の定める支払い義務にはあたらない」と訴えていた。



 民法第761条はこのように規定している。
「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」

 テレビの受信に関する契約は「日常の家事」に関するものだと思っていたが、札幌地裁は「商品の対価として支払うもの」でないという理由で否定したようだ。

 ところで、判決文はまだ見ていないから断定は出来ないが、NHKは夫婦間の日常家事債務の連帯性が否定された場合に備え、予備的に、夫がテレビを設置したことによる受信料請求も行っているだろう。NHKが敗訴したということは、この請求も認められなかったのかな。
 もしそうだとすれば、「受信料の支払いは法的な義務です」という長年のNHKの主張が裁判所によって否定されたことになる。これはNHKにとって一大事だな。


 この裁判の判決文は是非読んでみたい。そろそろ被告などからWebにアップされてないかな。


追記

民法761条の適用について毎日新聞の記事が判決を詳しく紹介している。

 裁判は妻の結んだ契約の効果が男性に及ぶのかが争点になった。NHK側は「日常生活に不可欠なテレビ放送に関する契約は夫婦が連帯して責任を負う」と主張。しかし、杉浦裁判官は「受信料が国民から徴収される特殊な負担金で、放送の対価として払われるものでない」と指摘。「物品の売買とは違い、取引の第三者を保護する民法の適用はない。また、男性が妻に代理権を与えた事実もない」と判断した。
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20100320hog00m040004000c.html


 例えば、専業主婦が後払いで米を買ったとする。米屋としては、普通なら無職の人間に後払いで物を売ったりしないが、稼ぎのある夫がいる主婦なら、最終的に夫の負担で代金を回収できると期待するから後払いで米を売ることが出来る。
 民法761条は、この米屋の「期待」を保護するためにある。もし夫が米代を払わないと事前に分かっていたら米を売らなかっただろう。
 もし、この法律が無く、米屋が夫に対して代金を請求できず、妻にも支払い能力が無かったら、売った米の分だけ損害がでる。そうなっては、米屋は妻にツケで米を売らなくなり、生活が不便になる。(昔はツケ払いが頻繁に行われていたらしい)
 では、NHKの場合はどうか。NHKは放送電波を流す対価として受信料を受け取るわけではない。もし、夫が受信料を払わないことが事前に分かっていたとしても、妻との間で受信契約を結ばない理由にはならない。それなら、民法761条でわざわざ保護する必要は無いということだ。

 判決文全文を読んだわけではないが、おそらくそういうことだろう。

NHKの実質敗訴では 受信料裁判

受信契約を締結したのに受信料を払わない者に対しNHKが未納分約16万円を請求した裁判の判決が出た。
裁判ではNHKの請求が認められたが、報道されている判決理由を読んでみるとNHKの実質敗訴ではないかと思える内容だ。


NHK受信料:未納の被告に全額支払い命令…東京地裁判決
 放送受信料の支払いを拒否した東京都内の30代と40代の男性2人に、NHKが未納分計16万6800円を請求した訴訟の判決で、東京地裁は28日、2人に全額の支払いを命じた。2人は「政治的介入を許したり、受信料の不正流用を行うNHKに受信料を支払うのは、思想良心の自由を定めた憲法に反する」と主張したが、綿引穣裁判長は「2人は元々自由意思で契約を交わした。(契約継続も)放送内容や経営活動を是認するよう認識の変更を迫るものではない」と合憲判断を示した。

 2人の弁護団によると、受信料を巡る憲法判断は初めて。30代男性は控訴する方針。NHKによると、不払いを巡る訴訟は計169件起こされ、今回の訴訟を含め11件が係争中で地裁判決は初めて。

 判決は、NHKを巡る問題を理由に受信料を支払いたくないとする2人の主張を「一つのものの見方として尊重されなければならない」とした。しかし(1)本人や家族が02〜03年、自主的に契約を交わした(2)04年3月まで支払いを続けた(3)解約には受信機の廃止が必要だと事前に知り得た−−などから「(契約や契約継続は)2人の思想良心の自由を侵害していない」とした。

 2人は「支払いを免れるには受信機を廃止しなければならず、民放の視聴を妨げられ、知る権利を侵害され違憲だ」とも主張した。判決は「放送法はNHKの放送を受信できる受信機の設置者に受信料支払いを強制している。民放の視聴を妨げる規定ではない」と述べた。2人は04年4月〜09年3月、計60カ月分の料金を請求されていた。【伊藤一郎】





>判決は「放送法はNHKの放送を受信できる受信機の設置者に受信料支払いを強制している。民放の視聴を妨げる規定ではない」と述べた。

私も馬鹿みたいな事を言っている裁判官が存在することは知っているが、この判決文を見る限りでは、テレビの設定変更でNHKの受信を不可能にしたら受信契約締結義務は無いということになりそうだな。そうでないと、受信契約を締結していない人の民放視聴を妨げることになる。
これは、NHKが今まで言ってきたことと真っ向から反する。

また、
>判決は、NHKを巡る問題を理由に受信料を支払いたくないとする2人の主張を「一つのものの見方として尊重されなければならない」とした

さらに、「本人…が…自主的に契約を交わした…から…思想良心の自由を侵害していない」としている。この論理でゆけば、NHKが市民に契約締結を強制することはできない。

もっとも、今回の裁判はすでに受信契約を締結した人を相手にしたものであり、契約していない人の契約締結義務については直接的な言及はなさそうだ。また、時として明らかな矛盾を抱える判決も存在する。だから、NHK受信契約締結義務は強制ではないと裁判所が判断するとは断定できないは、今回の判決はそれを強く示唆するものであるように思える。


まだ裁判所サイトでは判決文は公表されていないが、早く読みたい。



追記

裁判所サイトではまだ判決文は公開されていないが、別のサイトで公開されているので紹介する。

http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-August/000883.html

ついに来たか NHK非契約者を提訴

ついに来たか。


NHKが受信契約を締結していない者に対して契約締結を求める訴訟を起こすのは初めてのことだ。

これはNHKにとっては賭けだろうな。
もし、憲法違反などの理由で受信契約締結義務が否定されでもしたら、「法律で決まっています」の文句が使えなくなる。

さて、どうなることやら。

憲法違反の根拠としては、NHKの番組が基づいている思想と異なる思想を持つ者が強制的にNHKに受信料を払わされ、番組作りに協力させられることは思想・良心の侵害だ、というものが中心だろうか。

税理士会が政党に献金したり、町内会が神社に寄付したりしたということが憲法違反とする判決はあるが、それらは外部団体への支出である。団体内部での思想的対立が原因でその団体に違憲だと訴え、それが認められた判例は僕は知らない。もっとも、NHKのように、テレビ所有という極めて広い範囲の人間に対して強制的に契約締結を求める団体は存在しないがな。

この裁判の行方は気になります。

[NHK]契約結ばぬホテルを提訴 受信料支払い求め

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/090623.html
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