4月17日に名古屋高裁で自衛隊のイラク派遣を違憲とする判決があった。判決では、イラクのテロリストを「国に準じる組織」と認定し、そのような組織に対する多国籍軍の武力行使に自衛隊が協力することを違憲としている。テロリストを「国に準じる組織」と考えてよいのだろうか。

憲法9条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定されている。読み替えれば、「国際紛争を解決するために武力を行使してはならない」ということになる。「国際紛争」とは、「国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争い」のことである。つまり、国と国との争いを解決するために武力を行使してはいけない、ということである。

政府は、テロリストは「国に準じる組織」ではないとし、テロリストに武力を行使する多国籍軍に協力することは憲法に違反していないと考えていた。しかし、名古屋高裁はテロリストを「国に準じる組織」と認定した。テロリストが海外の勢力からも援助を受け、米軍駐留に反対するなどの政治目的を持ち、相応の兵力を持ち、組織的、計画的に多国籍軍に抗戦しているからだという。

しかし、このような判断は妥当だろうか。ほとんどのテロリストは政治目的の達成のために活動しているだろうし、同じ目的を持つ他国のテロ仲間から支援を受けたとしても不思議ではない。そのような強力なテロリストが組織的、計画的に戦ったからといっても、それをもって「国に準じる組織」とは言えないだろう。「国に準じる組織」は、少なくとも、新政権樹立や旧政権復興を目指して戦う組織のことを指すべき言葉である。米軍駐留に反対だから自爆テロを仕掛けるといった組織が「国に準じる」とは考えにくい。

もっとも、この名古屋高裁判決が違憲と書いたのは傍論部分であり、法的拘束力は無い。原告は違憲判決が出たことで大喜びであり、上告するつもりは無い。損害賠償請求や自衛隊派遣差し止め請求は退けられたため、政府の全面勝訴であり、政府は上告して最高裁の判断を仰ごうにも「訴えの利益」が無いので許されない。したがって、この判決は最高裁で再び審議されることのないまま確定する見通しである。